そろばんができるまで
そろばんはすばらしい計算機だ。
位どりも計算のしかたも、目で見てたしかめられるので、すぐれた教材として、世界で見なおされてきている。日本のそろばんは、おもに島根県や兵庫県などでつくられていて、おもしろいくふうや、名人のうでまえが見られる。
そろばん玉をつくる
そろばん玉の材料
カバノキ、ツゲなどのかたい木が使われる。機械で丸いぼうにけずる。
- 1.
回転台に材料の丸ぼうをさしこむと、カッターの刃が、決まったあつさの円板に切りとる。
中心にドリルで、工具をつきさす、小さなあなをあける。 - 2.
円板をつきさした工具を回転させて、カッターでかたがわからけずる。そのあとうらがえして反対がわをけずり、そろばん玉の大まかな形ができる。
- 3.
材料をとかしたおけに玉を入れて、回転させながら玉をそめる。
- 4.
切り口や角についているぎざぎざをとりのぞき、きれいにみがく。
- 5.
かわかしたあと、ドリルを通してあなさらいをし、あなを大きく、きれいにする。
- 6.
玉をふくろにつめて、手や機械でもむ。こうして、そろばん玉はつやつやになる。
わくづくりから組みたてへ
- 1.
計算の主役は玉だ。けれども、玉をきちんと動かすには中さんや外わく、ひごなどの役目も大切だ。じょうぶさと正確さを目ざしてつくられる
- 2.
わく材には、きれいでかたいコクタンが一番よい。そのほか、何まいかの板をはりあわせた集成材なども使われる。広い板から、のこで正確に切りだされる。
- 3.
表面をかんなでけずって、なめらかに仕上げる。
- 4.
同じ間かくに、刃がとりつけられたドリルを、横すべりさせて、あなを正しくあけていく。
竹ひごをつくる
- 1.
秋に竹(モウソウチク)を切る。よくかわかした竹の、ふしの部分を切りおとす。
- 2.
竹わり機で細かにわる。このとき、竹の内がわの、やわらかい部分もけずりすてる。
- 3.
細かにわった竹を、1本ずつひご通しにかけて、丸いきれいなひごにけずる。
- 4.
そろばんにあう長さに、ひごを切る。1本(竹の1ふし分)から、4~6本のそろばん用のひごができる。
- 5.
組みたては、中さんに竹ひごを通すことから始まる。ひごがきっちりとはまるあなに、1本1本手作業でおしこむ。ここがしっかりはまっていないと、玉ががたがたする。
一丁の部品せいぞろい
組みたてる前に、全部の部品を用意し、うらのかざり板や支柱などもふくめて、あなあけや切りこみなどをすませておく。
玉入れと仕上げ
- 1.
部品がそろったら玉入れだ。たくさんの玉の入ったおけを用意する。はじめは五玉。くぼみをつけたすくい板ですくった五玉を、ひらりと中さんにひごにうつしかえる。名人のうでまえだ。これに上わくをとりつけたあと、一玉を入れ、わく全体を組みたてる。そしてアルミニウムの線を通して、ゆがまないように強くし、けたごとのしるしをつけてみがけば完成だ。
- 2.
あなのあいたすくい板で玉をすくう
- 3.
すくい板にのった五玉。
- 4.
中さんのひごにうつす。
- 5.
玉の中におしこむようにする。何回かくりかえしたあと、くるりとすくい
あげると、一玉がきれいに入る。このときは一玉は5こ。 - 6.
いちばんはじの一玉をはじきだし、ここへ下の外わくを組みつける。
- 7.
わくの四すみやとちゅうに、小さなあなをあけて、アルミニウムの線材を通し、ゆがまないように強くする。けたごとのしるしは、黒いセルロイド線をさしこむ。出っぱりをけずって、やすりでみがく。
- 8.
きれいにみがいて完成。いろいろな検査をする。
近代化したそろばんの工程
鬮橋 義信さん
平成19年 そろばん伝統工芸士となりました。
森 憲孝さん